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【ホープフルS回顧】7番人気ロブチェンが“1戦1勝馬V”の快挙 ステイヤーの血が上位賑わすタフな戦いに

2025/12/29 10:24
勝木淳
2025年ホープフルS、レース結果,ⒸSPAIA

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混戦のクラシック世代

来年を占う重要な一戦ホープフルSはロブチェンが勝ち、重賞初制覇を飾り、2着フォルテアンジェロ、3着アスクエジンバラで決着した。

GⅠ昇格後の勝ち馬にはサートゥルナーリア、コントレイル、レガレイラ、クロワデュノールの名があり、文句なしの登竜門としての地位を築いた。必ずや来春につながるGⅠを制したのは7番人気のロブチェン。GⅠ昇格後初となる前走で新馬を勝った「1戦1勝馬」の優勝で幕を閉じた。

おそらくこの結末はこの世代のクラシック戦線を象徴しているだろう。明確な世代トップの主役は存在しない。混戦の世代。それが来年のクラシック戦線のキーワードだ。

ホープフルSには無敗の重賞ウイナーが2頭いた。京都2歳Sを勝ったジャスティンビスタと札幌2歳Sを勝ったショウナンガルフ。2頭は8着、14着と大敗を喫し、黒星がついた。どちらかが来年に可能性を残すような負け方をしていればまだしも、大敗だと今後の序列づけは極めて難しい。

朝日杯FSを勝ったカヴァレリッツオや敗れたアドマイヤクワッズが皐月賞に向かう公算が高く、距離延長さえクリアできれば、トップ戦線を形成するだろう。ロブチェンらホープフルS組は番付的にどの位置が適当なのか。レース内容をしっかり振り返らなければならない。

設定以上にタフな中山芝2000m

中山芝2000mは皐月賞と同じ舞台だが、同時に2歳戦でも芙蓉Sや葉牡丹賞が行われ、我々ファンサイドの視点で立てば、スピードのイメージこそあれど、そこまでタフな印象もない。だが、どうも2歳暮れ時点でこなすのは容易ではなく、我々が考える以上にスタミナを必要とするタフなコースのようだ。

勝ち馬は菊花賞、天皇賞(春)を勝ったワールドプレミアを父に持ち、2着も似たプロフィールのフィエールマンの産駒。3着馬は母の父がこれもステイヤーのマンハッタンカフェと、3000m超に強いステイヤーの血が上位を独占した。血統面でみれば、とても2000mGⅠとは思えない構成であり、それだけタフなコースだった。

レースはタフな戦いになることが前提になっており、序盤600m35.3、1000m通過1:01.3と慎重な入りだった。中盤には13.0-12.8と息を入れる区間がしっかり入った構成であり、スローペースで進んだ。一方で後半も上がり勝負ではなく、12.3-12.2-11.7-11.7-11.8で、5F59.7。極端な速いラップもなかった。

先行勢はじわじわとラップを上昇させていく理想的な加速からラストで末脚を伸ばし切れなかった。馬場も良馬場とはいえ、真冬の乾ききった馬場ではなく、例年以上にタフな競馬だったことは間違いない。

一方で、ラストの加速には物足りなさも残る。やはり2歳暮れの中山芝2000mはハードルが高く、体力面の限界を考慮しつつも、突き抜ける超A級はいなかったと判断できる。

スタミナ志向のロブチェン

混戦を断つ形になったのは1戦1勝のロブチェン。父ワールドプレミアはこの世代が初年度産駒だが、その種付け頭数は53頭。血統登録は25頭と必ずしも期待を集めたとは言えない。JRAでは4頭が出走し、勝ったのはロブチェンだけ。その唯一の勝ち馬がGⅠ馬に。これだから競馬はわからない。

ワールドプレミアが本格化したのは3歳秋のこと。ステイヤー特有の晩成の血は産駒の傾向にも重なる。それだけにロブチェンの勝利は価値がある。2歳GⅠ制覇は生産者にとって魅力でしかなく、ワールドプレミアの評価は瞬く間に見直されることになるだろう。

ロブチェンの初勝利は重馬場の芝2000mで逃げて上がり最速を記録しており、間違いなくスタミナ志向。設定距離以上の適性を求められるとき、真価を発揮する。たとえトライアルのスローペースで大敗しても、タフな流れで甦る。パターンは読めた。この勝利で付き合いやすい一頭になる。

逃げ切った新馬、差したGⅠと、対照的なレースで連勝を決めたのも心強い。センスは文句なし。馬場や展開さえ噛み合えばいつでも好走できる。適性外ではシビアにジャッジし、メリハリをつけて付き合おう。

上がりを要する展開向きの2、3着馬

2着フォルテアンジェロは東京芝2000mで上がり32.8を繰り出し2着に入る一方で、今回は上がり34.9で2着。ロブチェン同様、適度に上がりを要する展開向きだ。内から絶妙に外に持ち出された勝ち馬には及ばなかったが、しぶとさはきっちり発揮できた。父フィエールマンは勝ち鞍こそ長距離だが、中距離にも対応できた。中山芝2000mなら逆転の目もある。

3着はアスクエジンバラ。外枠から序盤、積極的に運んで位置を求め、中盤はひと息入れ、勝負所で早めに外をまくり上げると、直線では勝負圏内にいた。レースの進め方は文句なし。勝利もみえた。タフな流れになった京都2歳Sでジャスティンビスタより前で運び、2着に残った経験もこのレースにつながった。完璧なレース運びを考えれば、勝ちたかった。

3着では来春、再び賞金加算か権利取りに回らなければいけない。ちょっとした差がローテーションにおいて、予想以上に影響を及ぼす。クラシックの難しさを突きつけられることになるが、タフに勝ち抜いてほしい。


2025年ホープフルS、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。

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