【有馬記念回顧】12番人気の伏兵がレースを支配 最後にねじ伏せたミュージアムマイルの勝因は?

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レースの主導権を握ったコスモキュランダ
2025年最後の大一番・第70回有馬記念はミュージアムマイルが勝ち、GⅠ2勝目。2着コスモキュランダ、3着ダノンデサイルで決着した。
オッズの構成は四強対決。上位人気が枠順抽選で比較的いい枠を引き、伏兵の割り込みの可能性は下がったようにみえた。最後のピースである枠順は四強対決をより鮮明にしたといっていい。
残るは適性を決める展開。レースの支配者はいったいどの人馬なのか。中山芝2500mは前半のレースラップ次第で適性が大きく変化する。序盤の外回り3、4コーナーから1周目正面直線の攻防は推理を掻き立てた。
肝心のレースの支配者は、12番人気の伏兵コスモキュランダだった。メイショウタバルより速いスタートを決め、初手でハナをとるほどの勢いをみせた。この先制攻撃が、結果的に前に行きたい2頭のリズムをかく乱した。
ハナに立ちたいミステリーウェイはコスモキュランダを追い越すという一手を増やされ、メイショウタバルはマイペース先頭が叶わず、結果的に正面スタンド前で外に持ち出し、併せ馬にならないよう慎重に前を目指さざるを得なかった。向正面でミステリーウェイを捕まえ、先頭に立つことができたものの、この間、かなり脚を使わされてしまった。
1000m通過1:00.3(推定)は平均的なペースだったが、前は中盤まで先頭を巡る攻防を演じなければならず、ペース以上に体力を消耗してしまった。一方でコスモキュランダは2頭の攻防を悠然と構えて眺めていた。
どっちが先頭でもいい。その後ろを確保した時点で余裕が違った。やはりレースを支配したのはコスモキュランダだ。ミステリーウェイとメイショウタバルはコスモキュランダの土俵で相撲をとらされてしまった。
徹底したポジション確保が光ったミュージアムマイル
ある程度流れてくれたことで、後ろの有力勢は走りやすかったにちがいない。遅ければ自制する場面もあったが、その心配もない。
かといって前は中盤まで攻防を演じたことで、後ろを離す大逃げにももっていけない。差し馬勢にとって、仕掛けやすい展開になってしまっては、逃げ馬は良さを削がれる。コスモキュランダの組み立てが恐ろしくさえ思えた。
勝ったミュージアムマイルはスタートしてすぐに馬場の内から3頭目を確保するや、じっとそこを動かなかった。周りが内へ外へと動いたとしても関係なし。まるでC.デムーロ騎手には最初から勝ち筋が見えていたかのような競馬だった。すぐ目の前にはダノンデサイルがいる完璧すぎるポジション。見直せば見直すほど惚れ惚れできるので、みなさんもパトロール映像をもう一度みてほしい。
この秋はセントライト記念1着からスタートし、天皇賞(秋)2着。日本ダービーで負けた東京コースを着実に克服した。マスカレードボールとの差は位置取りだけ。前をとらえられなかった事実は鞍上の胸にきっちり刻まれていた。
だからこそ、有馬記念では決して前をとり逃しはしない。絶妙なスパートは天皇賞(秋)を踏まえてのことだろう。一瞬、コスモキュランダを逃しかけたが、最後はねじ伏せた。気迫あふれる人馬の躍動だった。
余談だが、ミュージアムマイルは枠順抽選会で最初に選ばれ、1/16の確率で4番を引いた。奇しくも11年前、今年死亡したジェンティルドンナも初の枠順抽選会で最初に登壇し、4番を選んだ。
当時は選ばれた順番に好きな番号を指定できたので、現在とは方式こそ異なるが、抽選会で最初に選ばれ、4番に入った馬が勝つという共通点があった。有馬記念はなんらかのオカルト馬券を探すのも楽しみのひとつだが、ミュージアムマイルが4番を引き当てた時点で、ジェンティルドンナにつながった人にとって、簡単だったのだろうか。
ちなみに、このときの2着馬はその年の弥生賞を勝ち、皐月賞2着だったトゥザワールド。今年の出走馬のなかで弥生賞を勝ち、皐月賞で2着に入ったのはコスモキュランダとタスティエーラだけだった。
スリリングな展開を呼んだ伏兵の流儀
これで秋の古馬中距離路線はマスカレードボールが天皇賞(秋)1着、ジャパンカップ2着。クロワデュノールはジャパンCのみの参戦で4着、ミュージアムマイルが天皇賞(秋)2着と有馬記念1着。3歳勢の勢いが止まらない。この3頭が来年のJRAを引っ張っていくことだろう。
2着以下、掲示板を占めたのは4歳馬たち。来年は斤量差もなくなる。戦いはさらに苛烈になっていく。
2着コスモキュランダはレースの支配者として完璧な立ち回りだった。最後に少し脚が鈍り、ミュージアムマイルにつかまったのは実力の差だろう。
だが、たとえ力差があったとしても、競馬は工夫さえ施せば、勝ち筋をつくることができる。そんなメッセージにみえた。初ブリンカーは積極策のヒントであり、果敢なる挑戦は有馬記念を予測不能なスリリングな展開に変えた。
3着ダノンデサイルは終始、ミュージアムマイルのターゲットになってしまった。最後は伸び負けてしまったが、距離もほんの少し長い可能性も考えたい。
4着レガレイラはスタートこそ悪くなかったが、その後はミュージアムマイルに対し、常に劣勢に立たされた。勝負所でも外を封じられ、前にダノンデサイルと結果的に内へ行かざるを得なかった。最後は差を詰めたものの、進路切り替えのスキに先にスパートされてしまった。外から末脚一閃がスタイルであり、持ち味を削がれた。
5着サンライズジパングは昨年の日本ダービー以来の芝だったが、大健闘。展開がもつれる有馬記念では、こういった直線一本にかける大胆な策が功を奏する。これもまた人気薄の流儀。狙いはよかった。
メイショウタバルは13着。コスモキュランダに並ばれた時点で余力がなかった。やはりマイペースだけが好走の道。勝つか負けるかはっきりしたタイプだけに、この着順は致し方なし。宝塚記念を勝ったことで、そう簡単にマイペースに持ち込めなくなったのは、今後、悩みの種になりそうだ。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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